*精養軒*
「一寸法師」 大正15年12月8日〜昭和2年2月20日「東京朝日新聞」
謎の一寸法師を見失った小林紋三は電車の中で山野大五郎夫人、百合枝に声をかけられます。そして紋三は夫人に、行方不明の令嬢を見つけ出すために知人の明智小五郎を紹介して欲しいと頼まれるのです。登場人物達はクモの糸にたぐられていくように、じわじわと事件に巻き込まれていきます。かなり怖いです。
新聞小説を意識したせいでしょう、乱歩は尋常でない筆力で読者をぐいぐいと異様な世界に引きずり込んでいきます。切断された腕を抱えた一寸法師が浅草公園を徘徊する冒頭シーン(乱歩帳「弁天山」参照)といい、上野公園の会話から明智登場までの導入といい、スリリングで本当にかっこいいです。
ところで上野公園でいい気分の食事をするなら精養軒もいいですが、最近できた西洋美術館のミュージアムカフェか、国立博物館の敷地内にある法隆寺宝物館のガーデンテラスがお奨めです。新しい店でサービスもしっかりしてますので、ぜひ一度利用してみてください。